平成から令和へと時代は移り、ランディングページ(LP)の成功は年々ハードルが高くなっています。そこで、令和のLP戦略について考えてみようと立ち上げた本企画。
前編では、”LPに鬼強い会社”として有名な株式会社free web hopeの代表・相原 祐樹さんにランディページの進化と意識すべきポイントをうかがいました。
後編では、これからLPに関わる担当者のためにLPの達人である相原さんの戦略を公開します。
インタビュアー:峯村耕太郎
取材日:2021年8月24日(株式会社free web hope オフィス)
※前編がまだの方はこちらから:
【前編】令和時代の最新LP戦略!ランディングページはこう進化している!
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LPで失敗してしまう要因
リサーチが全然足りていない
峯村:せっかくLPを作っても、成果が出ない要因はなんでしょうか?
相原:リサーチが全然足りていないことが多いですね。リサーチが足りないから、ターゲットも戦略も絞れず、沼にハマってよくわからなくなるんです。
LPの内容や方向性は最初の戦略次第で決まります。例えば、マッチングアプリの婚活サービスのLPを運営しているのですが、年代によって見せるビジュアルやコピーを変えています。
つまり、成功しているLPの真似をすればいいわけじゃなくて、戦略設計によるんです。ターゲティングで左右される。LPは戦略で失敗するとコンバージョンは不可能です。
あと、検索需要がない商材は難しいですね。ニーズが顕在化していないものは、LPだけで態度変容を起こせるユーザーは少ないですし、ターゲティングができないからネット広告でもマスっぽくなる。そうするとターゲット外の人に配信されて、経済的な効率は悪くなります。
LPや運用型広告の現場では、「今存在している商品」を売るしかない場合がほとんどです。この商品を求めている人はどこかに必ずいるので、強みを1つでも見つけて訴求すること。本当はマーケティングと商品開発は切っても切れない関係ですが、それができない担当や受託の場合においての話です。
根拠がないから意思決定が難しい
峯村:どこまでリサーチをすればいいでしょうか?
相原:大事なのは戦略の根拠を出すことです。その根拠に妥当性があるかどうか。決断できないなら、根拠が不十分ということ。シンプルにリサーチが足りないです。
自信を持って決断できる根拠を出せるまでリサーチをしてください。
あとは、自分をペルソナにしないこと。主観が入ってしまうからです。バイアスを取っ払って、正当性のありそうな仮説を立てることですね。
たとえライバルがいない空き枠に出稿しても、もしかしたら、出しても売れないから競合がいないだけかもしれない。その辺も調査しないと、意思決定が難しくなります。
峯村:相原さんの著書(『コンバージョンを獲るランディングページ』)にも、「LP作成の時間の80%はリサーチとペルソナ設定」と書かれていますね。
相原:調査をちゃんとやれば、制作の時間は短くなります。LPで書くべきことが絞れてくるから。それに、調査をしっかりやっていれば、ミスしても失敗の原因が把握しやすい。だからこそ、設計・戦略に時間を割くべきだと考えています。
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令和のLP制作のお作法
リサーチで意識すべき3ポイント
峯村:リサーチをするときのポイントを教えてもらえますか?
相原:3C(顧客、自社、競合)やSTP(市場細分化、狙う市場の決定、自社の立ち位置の明確化)など細かくは各フレームワークを使いますが、大きくは3つです。
- 商品の強みは何か?
- それを欲しがる人は誰なのか?
- その人はどこにいるのか?
まずは、商品の良さを見つけること。
「もっと商品を良くしましょう」と言っても元も子もないです。
現場ベースでは今、存在する商品を売るしかない場合がほとんどですよね。この商品を求めている人はどこかに必ずいるので、強みを1つでも見つけて訴求することです。
そして重要なのは、後半の2つ。誰が欲しいのか、その人はどこにいるのか。究極的にはこの2つだけが分かればだいぶ戦えます。
リサーチを徹底すれば極論、LPを作らないという選択もできるんです。DMの方が良いかもしれないし、チラシ、セミナーの方がいいかもしれない。
ただし、これがめちゃくちゃ難しいんですよ。競合をまとめて、ポジションMAPにしてみても、空いているポジションなんか中々無い。どこかで誰かと戦わなければならない。
その中で商品の強みはどう訴求したらマーケットに受け入れられるのかいくつかの案が出てくる、いくらリサーチしても絶対100%自信があるなんてことはなく、その中で決断しなければならない。
だから3つ書くとシンプルですが、やるのは非常に根気が要ります。
峯村:相原さん自身の経験はありますか?
相原:以前、足のかかとの角質を取る商品を売ったことがあります。貝殻のパウダーを洗面器のお湯に溶かして足をつけると、角質が取れるんです。
ターゲットがひとり暮らしの女性なんですけど、僕が自分で試してみたら、足より洗面器のほうがピッカピカになりました(笑)。
値段は1個4,000円。その金額で売らないと利益が出ないから値下げはできない。何よりの問題はコンビニに類似製品があって、しかも1個900円なんです。
峯村:絶望的ですね(笑)。
相原:それでも売らなきゃいけない。結果、国内ではなくミャンマーで売りました。探せば、どこかにニーズはあるんですよ。必要としている人が世界中絶対にどこかにいる。
峯村:すごい!ミャンマーを選んだのはリサーチを徹底したからですか?
相原:そうです。セブンイレブンにも各種ネットモールにも類似製品があるので、「国内で売るのは無理」という決断を最初にしました。
次に、東南アジアを調べて類似製品がない国を抽出しました。その中で卸ルートがあったのがミャンマーだったんです。
ミャンマーではテレビで商品をPRしました。テレビのチャンネルが6つくらいしかなくて元々国営放送が主だったので、視聴者からの信頼性が高いんですね。しかも、出稿料金も安くて、30分の番組枠を数万円で買い取りました。動画を作ってもらって放送した。それでバカ売れして、供給が追いつかなくなりました。
もう一つ、ミャンマーはクレジットカードの普及率が低くてネットショップの利用も少ない。じゃあ実店舗で販売すべきだと思って、ミャンマーの美容室へ卸して買えるようにしました。
峯村:まさにリサーチの賜物ですね。リサーチを徹底しなければ、絶対にできない決断です。
相原:日本でも同じことができますよ。例えばですが高齢者向けの健康食品やサプリを売る場合、夕方4時台のテレビCM枠なら地方なら安く買えます。全国に宣伝したり、人が多い都会で広告を打つ必要はありません。商品を買ってくれそうなひとの生活動線の中に広告がどこにあるか。
極論、ターゲットはどこにいるのか?これだけをこれだけを考えればいいんです。でも、それができない。LP担当者は商品のメリットを優先的に考えてしまうから。
LPの中身ではなくユーザーを見る
峯村:では、LPを制作するときのお作法はありますか?
相原:極端なことを言うと、LPはFAQ(よくある質問)だけでいいです。LPでユーザーの態度変容は起こせないって言いましたが、絶対にあったほうがいい要素はある。
ユーザーが意思決定に重要視することを順番に並べることですね。
- 結論がすぐにわかる
- TRUST(権威ある第三者の評判)
- UGC(SNSなどユーザー自身が作った"信頼に足る本物の"口コミ)
最低で言うと、この3つは欲しいです。必要な情報を伝えることと。
ただし、勘違いしてほしくないのは、この3つがあればCVするわけじゃない。正直、コンバージョンさせるLPのノウハウはありません。
この3つがあれば、最低限のLPができ上がるということです。もし、LP初心者で何を盛り込めば分からないなら、とりあえずこの3つでやってみればいいという意味です。
購入の意思決定に何が重要か決める
相原:LPを作るときは、購入の意思決定に何が重要か決めること。ユーザーが重要視することを知るためにもリサーチが必要なんです。
ユーザーが重要視することって結局値段でしょ?って言われたこともあるのですが、ユーザーにとっては値段が安いことが重要じゃない。例えばランボルギーニを買う人が重要視するのは価格じゃない。値段を気にする領域を超えてますから。その人たちが気になるのは、色や形、限定性や希少性。それらが価格より意思決定に重要な要素です。
慣習価格と言って消費者の中にすでに根付いている価格帯の商品(ジュースや牛丼など)も価格を気にしない例です。
ユーザーが意思決定に重要視することを把握して、上から順番にFAQ形式にする、それでユーザーにとってわかりやすいLPになります。
ユーザーは値段が安いことが重要じゃない。その価格で得られるベネフィットが充実しているかが重要なんです。価格と価値は違います。大事なのは後者です。
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BtoCとBtoB商材のLP制作
BtoC商材は「消費」
峯村:最後に、BtoCとBtoBのLPの違いを教えてください。
相原:BtoCとBtoB、個人と企業では欲しいものが根本的に違います。お金の使い方の本質が異なるんです。
個人の買い物は「消費」、企業の買い物は「投資」です。消費は個人の感情(欲求)が満たされれば成立し、投資はROI(費用対効果)が高いかどうか。
BtoCは、個人の消費心理を満たすキャッチコピーが必要です。例えば英会話商材を訴求する場合でも、海外への移住が目的なのか、ビジネス英語が必要なのか、外国人の友達や恋人が欲しいのかで刺さるコピーは変わってくる。
同じ英会話商材でも、目的やベネフィットは違うんです。そこを考え抜くことです。
BtoB商材は投資
相原:これは中小企業に限った話ですが、BtoBのコンバージョンへの導線は、良くも悪くも紋切り型でテンプレ化しています。
ホワイトペーパー(製品やサービスの説明資料)を配布してセミナーをやって、ホームページへ訪問してもらう。Webサイトの作りもユーザーボイスや事例集が中心です。
差別化はしにくいけど、同じフォーマットのほうが意思決定が楽なので良いことだと思っています。同じ競技で一番を獲るほうが考えることが少なくて済むので(笑)。
BtoBのLPがパターン化している中で、差別化できる会社は強い。というかLPがパターン化しているというより同じような商品が多いだけなのですが(笑)。
でもそれはtoCでも似たようなものです。差別化が出来ていて、投資対効果があることを訴求するには、エビデンスがどれだけあるかですね。
特に、BtoBは誰がその商材やサービスを使っているかが重要です。
勝ちパターンの一つとしては、ターゲットとなる企業の憧れの企業をユーザーボイスで出す。ベンチャーをターゲットにするなら憧れの企業像であるような「メルカリも使っているサービスです」などの文言があれば刺さりやすい。
峯村:なるほど。BtoCとBtoBで違いはあるけど、根本的にはユーザーの心理を考えることが大切なんですね。
相原:そうです。勝ち方のパターンを学ぶよりも、売りたい商品やサービスが誰に、なぜ必要で、その人たちがどこにいるかを考えること。これに尽きます。
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令和時代の最新LP戦略 まとめ
令和の最新LP戦略について考えてみようと立ち上げた本企画。後編では、相原さんに具体的なLP制作のポイントをうかがいました。
LPで失敗する要因:リサーチが足りていない
:リサーチをして戦略の根拠を出すことがポイント
:リサーチに成功すればLP制作の時間は短縮できる
リサーチするときのポイント:商品の強みは何か?
それを欲しがる人は誰なのか?
その人はどこにいるのか。
LP制作の作法:結論がすぐにわかる
:TRUSTを入れる
:UGCを設置する
インタビューを通して、相原さんのLP制作におけるポイントがシンプルであることに驚きました。「ユーザーが意思決定に重要視することを把握して、上から順番にいれていくだけ」。
LPの中身ではなく、ユーザーを見ること。納得のいく戦略の根拠を出せるまでリサーチを徹底する。成果から遠そうに見えることこそ、成功への近道ではないでしょうか。
本記事が、これからLPに挑む担当者、マーケターの手引きとなることを願っています。
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