- 更新日 2024.10.29
- カテゴリー ECサイト
ECサイトのフルスクラッチ開発とは?メリット・デメリットを解説
いくつかあるECサイト構築方法のうち、もっとも自由度が高いのが「フルスクラッチ開発」。新たに自社ECサイトの立ち上げを検討している企業・店舗担当者の方であれば、フルスクラッチを採用すべきなのか?以下のようなことを知りたいはず。
・ECサイトをフルスクラッチ開発するメリットは?
・他のECサイト構築方法との違いは?
・フルスクラッチにデメリットはある?
・フルスクラッチ開発のECサイトを活かせるのはどんな企業?
そこで本記事では、他のECサイト構築方法との違いや、採用する最大のメリット、知っておきたいデメリットを含むフルスクラッチ開発の概要・基本を解説!フルスクラッチ開発のECサイトを活かせる企業の特性も紹介していきます。
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ECサイトのフルスクラッチ開発とは
画像引用:ZOZOTOWN
ECサイトはユーザーの操作画面となる「フロントエンド」、ショッピング機能を提供する「バックエンド」、商品・顧客データなどを保管・管理する「データベース」で構成されており、各プログラムはインターネットに接続されたサーバに格納されます。
つまり、フルスクラッチ開発とは、ECサイトを構成する「フロントエンド」「バックエンド」「データベース」の各プログラムを、既存のEC構築ツールやサービスを利用せずにゼロから開発していくこと。誰もが知るECサイト・モール「Amazon」や、アパレル業界の「ユニクロ」「ZOZOTOWN」などのECサイトがフルスクラッチで開発されています。
事実上の制限なくどんなECサイトでも構築できる開発方法
たとえば、そのときどきの最新技術を採用したり、他のECサイトにはない独自機能を実装することができます。また、自社基幹システムやスマホアプリとシームレスに連携させたり、将来的な規模のスケーリングに備えて拡張性を持たせておくなども可能です。それこそ、フルスクラッチならAmazonのような巨大ECサイトも構築できます。
フルスクラッチ開発で利用される言語・フレームワーク
よく利用される言語 |
言語と組み合わせて利用されるフレームワーク |
PHP |
Laravel、Symfony |
Ruby |
Ruby on Rails |
Java |
Spring Framework、Jakarta EEなど |
Python |
Django、web2pyなど |
ECサイトはWebサイトの一種だともいえるため、ユーザーの目にするフロントエンド部分は、HTML・CSS・JavaScriptなどのWeb技術を利用して作られます。一方、機能を提供するバックエンド、データを管理するデータベースで利用される技術は、フルスクラッチ開発するECサイトの要件に応じてさまざま。
たとえば、フルスクラッチ開発であっても、あらかじめ汎用的な機能が網羅されたベースプログラム「フレームワーク」を活用することもあります。ECサイトの要件に応じて適切なプログラミング言語、フレームワークの組み合わせは異なります。
ECサイトをフルスクラッチ開発するメリット
それでは、ECサイトをフルスクラッチ開発するメリットとはなんでしょう?簡単に解説していきます。
独自のビジネスモデルを創出できる
IT技術の進化とともに、ASP、オープンソース、パッケージそれぞれのECサイト構築プラットフォームは進化してきました。SaaSでありながら、オープンソースやパッケージのようにテンプレート・アプリ(プラグイン)で柔軟にカスタマイズできるShopifyのようなサービスもあります。
しかし、進化しているとはいえ、既存のECサイト構築プラットフォームは「現時点でニーズの高い機能を網羅している」に過ぎません。イノベーションを起こせる新たなアイデアがあっても、既存のツール・サービスでは実現できませんが、フルスクラッチでECサイトを構築するなら可能。事実上の制限なく開発できるフルスクラッチなら、自社独自のECビジネスモデルを創出できるのです。
事業計画の変更に臨機応変に対応できる
フルスクラッチで構築したECサイトは、完全な自社システムであるため、ローンチ後の機能追加・拡張も自由自在。つまり、自社のEC事業計画に変更を加えたい場合でも、フルスクラッチECサイトなら臨機応変に対応可能です。
たとえば、フルスクラッチECサイト「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響もあり、多くの店舗を休業せざるを得なかった2020年8月期、国内事業全体の売上が前期比7.6%減の8,068億円にとどまりました。しかし、ECサイトの売上は29.3%増の1.076億円までに成長。2021年8月期には、海外を含むグループ全体のEC売上が3,800億円になり、ECの売上構成比も9%から18%までに高まりました。
画像引用:ネットショップ担当者フォーラム
これは、事業環境の変化に応じてデジタル広告の比率を増やしたことに加え、着こなし発見アプリ「スタイルヒント」をECサイトと連動し、オンラインで購入できる仕組みを強化したからです。フルスクラッチECサイトならではのメリットを活かした好例だといえるでしょう。
機能要件を最適化しやすい
フルスクラッチ開発なら、本当に自社が必要としている機能のみに絞り込んだサイトを開発できるメリットが得られます。これは、企画・要件定義という開発工程を通じて、自社の機能要件(サイトに求められる必要な機能)を明確にしていくという、フルスクラッチ開発の特徴があるからです。
ECサイトをフルスクラッチ開発するデメリット
フルスクラッチ開発は自由度が高い一方で、以下のデメリットも存在します。
- 開発期間と費用がかかる
- 継続的なメンテナンスが必要になる
- 高度な専門スキルが必要
開発期間と費用がかかる
ゼロからシステムを構築するフルスクラッチ開発は、完成までの期間が長くなる傾向です。市場の変化が激しい現代において、開発期間の延長は競合他社に遅れを取るだけでなく、市場ニーズの変化に対応できなくなるリスクも抱えています。
開発期間が長引けば、それだけ人件費やサーバー費用などのコストも増加します。複雑な機能や独自性の高いECサイトだと、開発期間と費用はさらに膨らむでしょう。
また、ECサイト制作中に仕様変更や修正が発生した場合、対処する時間と費用も追加で必要になります。制作の初期段階でどこまで仕様を固められるか、仕様変更に柔軟に対応できる体制をいかに構築できるかが、開発期間と費用を抑える鍵となります。
継続的なメンテナンスが必要になる
フルスクラッチで開発されたECサイトは、一度完成すれば終わりではなく、継続的なメンテナンスが不可欠です。定期的なアップデートやセキュリティ対策の強化、場合によっては数年単位での大規模な改修が必要になります。
特にECサイトの運用歴が長くなると、システムがブラックボックス化する危険性もあります。システムに精通した担当者が退職しても、社内の人材のみでECサイト改善や保守運用が行えるよう、日頃からマニュアルを整備しておかなければなりません。
また市場動向は常に変化するため、ECサイトも時代にあわせた進化が求められます。SNS連携機能の追加や買い物カートの改善など、顧客ニーズを捉えたメンテナンスの実施は、ECサイトを長期的に運用する上で不可欠となります。
高度な専門スキルが必要
フルスクラッチ開発のECサイト構築は、ゼロからシステムを作り上げる手法のため、高度な専門スキルが求められます。単にプログラミングの知識だけでなく、データベース設計・サーバー管理・セキュリティ対策・UI/UXデザインなど、多岐にわたる専門知識と経験が必要です。
大規模ECサイトの構築や複雑な機能を実装するケースだと、各分野に精通したスペシャリストを集めなければなりません。専門性の高い人材の確保は容易ではなく、育成するにも時間とコストがかかります。
フルスクラッチ開発のスキルを持つ人材が社内にいない場合、外部の専門業者へ委託することになるでしょう。ただし、外部委託はコミュニケーションコストの増加や、システムのブラックボックス化といったリスクも伴います。
ECサイトのフルスクラッチ開発を成功させるには、必要なスキルセットを明確化し、適切な人材確保の計画立案が重要です。また開発チーム内での知識共有や、社内人材のスキルアップを促進する体制も必要となります。
他のECサイト構築方法とフルスクラッチの違い
ECサイト構築の方法は、フルスクラッチ開発だけではありません。以下ではフルスクラッチ以外の構築方法を紹介します。
他のECサイト構築方法
ASP型 | オープンソース型 | パッケージ型 | |
構築方法 |
インターネット経由で 構築サービスをレンタル |
無償のソースコードで開発 |
既存のパッケージソフト を使用 |
費用 | 安 | 安 | 中 |
開発期間 | 早 | 中 | 早 |
カスタマイズ性 | 低 | 中 | 低〜中 |
メリット |
・費用が抑えられる ・出店ハードルが低い |
・費用が抑えられる ・カスタマイズ性が高い |
・高いセキュリティ性 ・構築スピードが早い |
デメリット |
・外部との連携がしにくい ・カスタマイズ性が低い |
・専門スキルが必要 ・セキュリティ対策が必要 |
・費用がかかる ・カスタマイズが限られる |
フルスクラッチ開発以外の主要な方法としては、上表のASP型・オープンソース型・パッケージ型が挙げられます。
ASP型は、ECサイト構築に必要な機能をインターネット経由でレンタルするサービスです。手軽に導入できる上に専門知識も不要ですが、カスタマイズ性は低く、他サービスへの乗り換えが難しい場合があります。
オープンソース型は、無料で公開されているソースコードで構築する方法です。高いカスタマイズ性と低コストなのが魅力ですが、専門的な知識を要する上に、セキュリティ対策やシステムのアップデートも自身で行う必要があります。
パッケージ型は、ECサイトの基本機能が備わったパッケージソフトで構築する方法です。比較的短期間で構築でき、サポート体制も充実していますが、カスタマイズの自由度には限界があります。
下記事では上記3つの構築方法について解説していますので、より詳しい内容を知りたい方は参考にしてみてください。
フルスクラッチとの違い
前述したASP型・オープンソース型・パッケージ型の構築方法と、フルスクラッチ開発との違いをまとめると下表のとおりです。
ASP型・オープンソース型 パッケージ型 |
フルスクラッチ開発 | |
費用 | 安〜中 | 高 |
開発期間 | 早〜中 | 遅 |
カスタマイズ性 | 低〜中 | 高 |
メリット |
・費用が抑えられる ・構築スピードが比較的早い |
・カスタマイズ性が非常に高い |
デメリット |
・外部との連携がしにくい ・カスタマイズが限られる |
・費用が高額になりやすい ・開発期間が長期化する ・高度な専門スキルが必要 |
上表でも伺えるように、フルスクラッチ開発はカスタマイズ性の高さが最大のアドバンテージです。
デザイン・機能・システム構成など、自社のビジネスにあわせて自由に設計できるため、競合との差別化や独自サービスの提供が可能です。内製化の仕組みまで構築できれば、システムの改善や新機能の追加が迅速に行え、市場の変化への対応力も高まります。
一方で他の構築方法では、ある程度完成されたシステムやプラットフォームを利用するため、フルスクラッチ開発ほどの自由度はありません。その分、開発期間やコストが抑えられ、専門知識がなくても比較的容易にECサイトを構築できるメリットがあります。
フルスクラッチでのECサイト構築は費用や開発期間、専門性の面でハードルが高いですが、高い自由度と独自性を求める企業にとっては、最適な選択肢といえます。
フルスクラッチ開発したECサイトの事例
ここでは、フルスクラッチで開発されたECサイトの事例を紹介します。
ECサイト制作で参考になる事例は、他にも多数存在します。下記ではECサイトの成功事例を紹介していますので、他の事例を参考にしたい方はぜひご覧ください。
ECサイトをフルスクラッチ開発する際の費用相場
ECサイトをフルスクラッチ開発する際の構築費用・料金相場は500万円以上です。フルスクラッチ開発は、ゼロから完全オリジナルでシステムを構築するため、費用は他の構築方法と比べて最も高額になります。
また開発後は、システムのアップデートやセキュリティ対策、機能の改善など継続的なメンテナンスが必要となり、これらにも追加で費用が発生します。ECサイトの構築では、初期費用だけでなく長期的な運用コストも見据えた上で、費用対効果を慎重に検討しなければなりません。
予算に余裕があり、独自の機能やカスタマイズ性を重視する企業にとっては、フルスクラッチ開発は投資に見合う価値があるといえます。一方で予算が限られている場合は、他の構築方法も比較検討すると良いです。
下記事では、ECサイト構築の費用相場について解説しています。制作会社へ見積りを取る際に役立ちますので、依頼前にぜひ参考にしてみてください。
ECサイトのフルスクラッチ開発を担当するのは?
メリットが理解できて、実際にフルスクラッチでECサイトを開発しようか検討する前に、誰が開発を担当するかを決めなければなりません。利用される技術を見てもお分かりのように、ECサイトのフルスクラッチ開発はシステム開発とイコール。当然、ECサイトの構築にはシステム開発のノウハウが必要となりますが、大きく「外部のECサイト・システム開発会社」「自社開発チームの主導によるインハウス開発」の2つの構築方法が考えられます。
外部の開発会社に委託
フルスクラッチ開発に対応する外部開発会社にECサイト構築を委託する方法です。一般的には、構築するECサイトに必要な機能・要求を自社でまとめ、開発会社主導で「要件定義」「設計」「実装」を進めていくウォーターフォール開発が採用されることがほとんど。自社開発チームを持たない企業・店舗が多かった、これまでの主流といえる方法です。
自社のジャンルとなるべく同じ開発の実績が豊富な開発会社を選ぶのがおすすめ。なぜなら、自社への理解が深い可能性が高いから。特に大規模なECサイトになるほど、開発実績の有無がそのままサイトの品質に直結します。自社にシステム開発の専門知識や技術がない、大規模なサイト開発を計画している場合は、外注がおすすめです。
インハウス(内製)で開発
要件定義から設計、実装、テスト、リリースまで、開発プロセスのすべてを自社チームで担当する方法です。実装時に不足するエンジニアを外部から調達することはあっても、あくまでも開発の主導権を自社が持つのが特徴。近年フルスクラッチでECサイトを構築する場合の主流の方法となっています。外注費用がかからないメリットはあります。ただし、相応に人材を採用するコストがかかりることに注意しましょう。
フルスクラッチでECサイトを構築する注意点
注意すべきは「体制」「コスト」に関すること。以下から簡単に解説していきます。
インハウスでなければメリットは半減する
フルスクラッチECサイト最大のメリットである「独自のビジネスモデル創出」「事業計画への臨機応変な対応」は、インハウス(自社内製)でのECサイト構築・運営でなければ効果を最大化できません。そもそも「独自のビジネスモデル創出」は、企業のミッション・理念と直結した経営戦略そのものです。また、ECサイトのフルスクラッチ開発を外注していたのでは「事業計画への臨機応変な対応」は望めません。ECサイトを運営するなかで得られたデータを事業戦略に反映させ、変更を素早く実行するためには、インハウスでECサイト構築・運営できる体制が必要不可欠なのです。
潤沢な資金が必要
ときには1億円を超える開発コストが必要になるフルスクラッチECサイトは、少なくとも年商50億円以上の企業でないと費用対効果に見合わない可能性が高いといえます。また、ASP(SaaS)のように自動でソフトウェアアップデートされないフルスクラッチECサイトは、システムが陳腐化しやすいデメリットもあります。構築したECサイトはそのまま使い続けられるわけではなく、5年程度のサイクルでリニューアルする必要も出てくるでしょう。
ECサイトをフルスクラッチ開発するべきは企業の特徴は主に5つ
メリット・デメリットを踏まえると、以下の条件を満たす企業・店舗が該当すると考えられます。
- ECサイト構築・運営に潤沢な資金を投入できる年商50億円以上
- インハウスでECサイト構築・運営できるリソース(開発・運営チーム)がある
- ECサイト運営で得られるインサイトを戦略に転換できるマーケティングリソースがある
- パッケージでは実現できない特殊な業務フロー・手順が必要
- コンプライアンス・セキュリティなどの特殊な要件を満たす機能が必要
ECサイトフルスクラッチまとめ
自由にECサイトを構築できるフルスクラッチを選ぶべきか?悩んでいる方に向け、本記事では、他のECサイト構築方法との違いや、採用する最大のメリット、知っておきたいデメリットを含むフルスクラッチ開発の概要・基本を解説するとともに、フルスクラッチ開発のECサイトを活かせる企業の特性も紹介してきました。
ECサイトをフルスクラッチ開発する手法は、現代でもメリットの大きなECサイト構築方法であることに変わりありませんが、それを活かせる企業・店舗はそれほど多くないのも事実です。構築方法ありきで考えるのではなく、ECサイトの目的・規模からブレイクダウンして最適な構築方法を選定することが重要です。
※ECサイトのフルスクラッチ開発を外部開発会社に依頼したい方、あるいはECサイトの構築方法に悩んでいる方は、Web幹事にご相談ください。専任のアドバイザーが最適なサービスや開発会社をご紹介します。相談料などは一切かかりませんので、お気軽にお問い合わせください。
コンサルタントのご紹介
代表取締役
岩田 真
2015年にWeb制作会社を設立し、
3年間で上場企業を含む50社以上制作に携わらせていただきました。
ホームページ制作のオンライン相談窓口「Web幹事」は、35,000件を超える豊富な相談実績と幅広い知識で、お客様のあらゆるニーズにお応えします。
Web制作業界のプロが丁寧にヒアリングしますので、
初心者の方でも安心してご相談ください!
Q. ECサイトをフルスクラッチ開発するメリットは?
ECサイトをフルスクラッチ開発するメリットとして「独自のビジネスモデルを創出できる」「事業計画の変更に臨機応変に対応できる「機能要件を最適化しやすい」」等が挙げられます。それぞれの詳しい特徴は記事内で紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Q. ECサイトをフルスクラッチ開発する際の注意点(デメリット)は?
ECサイトをフルスクラッチ開発するデメリットは「インハウス(自社内製)でのECサイト構築・運営でなければ効果を最大化できない」「潤沢な資金が必要」などです。具体的な対策や知っておくべき注意点については、記事をご参照ください。
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この記事を書いた人
梓澤 昌敏
専門分野: 音楽・映像制作、オウンドメディア、ビジネス
音楽・映像制作の現場を経て、スタジオ構築側の業界へ。マネージャー・コンサルタントとして制作現場の構築に携わる一方、自社オウンドメディアの立ち上げを含むマーケティングも担当してきました。現在アメリカ在住。作曲を含む音楽制作も提供しています。
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